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3 古井戸の底(2) [DQ4-1]

3 古井戸の底(2)


 道は曲りくねって続いた。水路であったにしては、あまりに複雑すぎている。注意深く見詰てみると、ちょっとした坂を下った先に、泥と苔に覆われた宝箱らしいものを見つけた。階段をおりて地下2階まで見つかった。
 古代のなにがしかが、この道を洞窟のようなものとして建設し、巧みに井戸に偽装しておいたことを、ライアンは予想した。地下深くに、これ程の規模を持つ洞窟を作り上げたのは、いったいどんな文明なのだろうか。わがままププルが持去ったという妖しの靴もまた、古の呪法を施された品であるのかもしれない。それが、なぜ、伝説にもなっていないかわからない。どうして滅びてしまったかも。
 地下2階から石段を下り、また登り、湿った匂いのする闇の中をどこまでもさまよううちに、ライアンは次第にゆえのない恐怖を覚えなくなり、ワクワクと胸を弾ませた。重大な探し物をしに来たことさえも、なかば忘れ掛けた。この地下の巨大な迷宮そのものに、少年のように、すっかり魅了されてしまったのだった。
 どれほどの広さがあるだろう。
 ここを使っていたひと達は、どんなひと達か。
 まぶたを閉じれば、見知らぬ太古の住人の思いが、息遣いが、今も壁に刻まれて残っているような気さえする。
 たぶん、子供たちもそうなのだろう。時のかなたに旅する様な、この感動。世の人々のいまだに知らぬ秘密が、次々に目の前に現れる、この興奮。
 彼らが、信用できる人たち以外にここのことを頑なに隠しておかずにいられぬ気持ちが、ライアンには痛いほどよくわかった。誰にも知られない様、守り通しておきたい気持ちが。
 大人たちは、ここの宝物の、真の価値を理解しないだろう。彼らの手にかかったら、『危険な古井戸』は固く封印されてしまうかもしれないし、あるいは、すっかり掃除して、ただの観光地に変えてしまうかもしれない。
 おとな達。
 ライアンは苦笑を洩らした。自分を『おとな達』の中に含んでいないことに気づいて。確かに、自分には、まだどこかしら、夢見がちの、子供のようなところがある。年に不足はなかろうに。王宮の戦士ともあろうものが。
 すり減った壁を、ライアンは撫でた。だが、ほこりに塗れた壁を指で辿れば、この複雑な地中通路を作り上げた古の民族の息吹が、その封じ込めた伝言が、僅か乍らも感じられる気がした。ライアンはまぶたを閉じ、じっとそれを味わった。
 すると彼は知った。底の先に、何かが漂っているものがあることを。
「何もの!」
 鉄のやりを抜き放ち、身構え乍ら叫んだが、はったとばかりに見た視線は少々高すぎた。
 そこにいたのは、ぷよぷよとした水色の胴体に十本の足を持った、奇妙極まりない生き物いや魔物だ。身長はライアンの膝に届くかというあたり、あっけに取られた戦士の顔を見上乍ら、その瞳は無邪気さに溢れている。
 魔物は「ぼくホイミン。今はホイミスライムなの。でも、人間になるのが夢なんだ」と言った。
 面食い乍らも、「わたしはライアン。そなた、なぜそのような妙な夢を持った」ライアンは問うた。
 ホイミンは「うん。話せば長いことながら。聞けば短い物語だよ。ぼくはもともと普通のスライムだったんだ。でも、ぼくは空を飛んでみたくて、ずっと空が飛べますようにって夢見続けたんだ。そしたら、こうやって浮ぶことが出きるホイミスライムに、進化したんだ。さらに、自由自在に、空を、飛んでみたいって夢見たんだ。するとある人達の仲間になって、夢をかなえることができた。その時人間にもいい人達がいるんだってわかったんだ。ぼく、考えた。次は、人間になりたい。人間になったら、きっと、今よりもいろんな夢を、かなえられるかもしれないって」と答えた。
「夢をかなえたか」
 スライムからホイミスライムに進化することだってライアンには不思議な出来事だと感じていた。だが、ひょっとしたら実は、この生物にとっては、当たり前のことかもしれないな、と、ライアンは考えた。実際に夢がかなうかはわからないが、現実が出た時まで、大きく持つに越したことはないだろう、と。
 魔物は「ねえ、人間の仲間になったら人間になれるかなぁ・・・・・・・?」と言った。
 まさか。どこの世界にそんな奇跡があろうか。そう思いながらも、「さて、どうだろう」ライアンは口ごもった。相手が魔物であろうとも、落胆する顔を見たくなかった。魔物の、夢見がちな瞳が彼を覗き込んだ。
「そうだ!ぼくを仲間にしてよっ」
 わたしはここで、連れを作ろうというか。寂しさのために?それともただうまく、利用するために?
 むっつりと「空飛ぶ靴のありかを知っているか。この迷路のどこかにあるはずなんだ。その靴のために、イムルの村から、多くの子供達がゆくえ不明になった」尋ねる己の声をライアンは聞いた。
「それは大変だ」
「そうだ。大変だ。だから、助けに行きたい。知っておるならば、案内しろ」
 ホイミンと名乗ったものは、「了解っ!ああっ、他でもないイムルの子供達のために役に立てるなんて、すっごく嬉しいですっ!わーい!ありがとう!うっれしいな~。また人間とお友達になれたよう。ライアン様のために、ぼくめいっぱい頑張るね」興奮のあまり、頬(?)を赤く火照らせ乍ら跳ね回った。
 わざと偉そうに言ってやったのに、こいつは、いじらしくも喜ぶのだ。
 鉄のやりを腰に収め乍ら、ライアンは胸の疼きを押し殺した。
「では、行こう。ホイミン」
(続く)

※次回は14日更新です。
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