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3 古井戸の底(3) [DQ4-1]

3 古井戸の底(3)


 曲りくねった道を、ホイミンはライアンのあとについて歩いた。遠くに目に付く見事な細工や放置された宝箱のある場所で、その来歴や意味やらを、熱心に語ってくれた。自慢の玩具を見せびらかすこどものように、いきいきと、瞳を輝かせながら。
「ライアン様!」
「どうした?」
「えへへ、呼んでみただけ。退屈な時は、僕と、おしゃべりしようよ。いつでも、話しかけてね」
「ああ」
「前に、ライアン様みたいな、鎧を着た人に、仲間にしてって、頼んだら、断られたんだ。ひどいよねー。ぼくが、ホイミスライムだからって。ぷんぷん!ぼく、ホイミが得意なんだよ。痛くなったら、いつでも言ってね」
 どうやらホイミンは久し振りに話し相手を見つけたからか、ライアンに対して楽しそうにしゃべった。
「それにしてもうまく話すな。モンスターの言葉と人間の言葉はやはり少し違うんだろう?」
ライアンは最初に感じたホイミンへの疑問を、尋ねてみた。
「いつか、人間になることが、ぼくの昔からの、夢なんだよ。だから、人間の言葉、覚えたの」
「驚いたな、ホイミン。そなたなんとも努力家ではないか。如何にして覚えたんだ」
 ホイミンは「むかしね、ぼくがある人達と旅してた時の綺麗なお姉さんに歌で習ったんだよ。それで、ぼく、歌を歌ったり作ったりするのが好きになったんだ。それにここには、うんと大勢のホイミスライムがいて、ほかのモンスターもいっぱいいて、みんな、もっと昔のことを、よく知ってるんです」と口ごもった。
「旅?一体誰と」
 ホイミンはますます顔を赤くすると、「ええと。昔モンスターが大暴れした時代の・・・・・・ううん、ややこしくて、詳しいことは、みーんな忘れちゃったの・・・・・・。ぼく、忘れっぽいホイミスライムだから」多数の脚の何本かを、くねくねと絡めた。
「ふむ」
 こいつ何かを隠しているな、とライアンは思ったが、あえて追及はしなかった。魔物が大暴れした時代とは、バトランドにも伝わる地獄の帝王という存在が出現していた時だろう。それから平和になり、現在までの長い年月を、ずっとひとりぼっちで過したのだろうホイミンの孤独を、しみじみ感じた。
 そういえばホイミンの話し方は子供っぽいが、その声にはどこか響きがある。将来成長すれば美声といわれるのは間違いない。歌えば素晴らしいだろう歌声を、アレクスは聞いただろうか。子供達は聞いただろうか。
 もしこの不憫な生き物が、このまま老いさらばえて死んでしまったら、例えば古の忘れつつある国の物語などを、ひとは永遠に失ってしまうのだ。
 ライアンは「もしそなたが人間になったなら。吟遊詩人になるがいいな。誰も知らん物語を、たくさん知っておるんだろう?きっと、世界1の人気者になることだろうよ」と言った。
 はにかみ乍らも「ほんとですか。うん、ぼく、頭の中にだけしまってる歌が、いっぱいあるよ。誰かが喜んで聞いてくれるなら、いくらでも歌いたいし、聞かせたい。吟遊詩人だなんて、夢みたいですよ。ああ、素敵だ!ね。きっと、そうなりますよね、ライアン様」と嬉しそうにホイミンは跳ねた。
(続く)

※次回は17日更新です。
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